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美しい本の世界<青年> [本のこと]

最近あまり本を読む時間がないので、美しい本を愛でています。
今回は、橋口五葉様が装幀を手掛けたこちらの作品。

森鷗外「青年」。

五葉様は漱石先生の「吾輩は猫である」で装幀家としてデビューし、
以後他の作家の作品も手掛け、その数は生涯で100点以上にも上ります。
この作品もその一つ。

表紙に蝶をあしらったデザインは「胡蝶本」と呼ばれ、人気を博して
いたそうです。
「胡蝶本」は鷗外先生以外にも、泉鏡花や永井荷風など様々な作家の
作品に使用されました。

まずは函。
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表紙、背、背表紙。
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「胡蝶本」と言われるだけあって、背には美しい蝶が描かれています。
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表紙、背表紙にも蝶が舞っていて素敵。よく見るとトンボもいます。
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扉には鳥が描かれています。
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表題。森林太郎は、鷗外先生の本名。
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奥付。
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漱石作品も素敵でしたが、今回のデザインも素晴らしい。
五葉様は、作家や内容によってデザインの雰囲気を変えていたのだそう。
確かに、漱石先生の装幀でも作品ごとに雰囲気を変えていたり、一冊の
本の中でも表紙、見返し、扉に様々なデザインを施す気合の入れようでした。
まだ装幀家という職業がなかった当時では、相当斬新だったでしょうね。

39歳という若さでこの世を去ってしまった五葉様ですが、画人として歩んだ
生涯のうち、その大半を装幀の仕事に携わったそうです。
本は内容だけでなく、デザインも楽しむことができるということを私に
教えてくれた五葉様。

書店に並んでいる文庫本では、彼の功績を目にすることができないのが
とても残念ですが、この場で少しでも誰かの目に留まることになれば
嬉しく思います。

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世界のふしぎな木の実図鑑 [本のこと]

蒸し暑さは残るものの、朝晩は涼しくなってきた今日この頃。

近所の公園を歩いていたら、どんぐりがたくさん落ちていました。
特に帽子を被った状態のどんぐりって、かわいいですよね。
どんぐりや松ぼっくりは、ちょっとした秋のお楽しみ。

そういえば、先日知り合いからかわいいお土産を頂きました。
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ヒマラヤスギの松ぼっくり。
鳥さんのキャンドルホルダーに入れてみました。

ヒマラヤスギの松ぼっくりは、上から見るとバラのように見えて、
シダーローズと呼ばれるそうです。
確かにバラみたい!
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さらにその知人から、面白い本を教えて頂きました。
「世界のふしぎな木の実図鑑」


ページをめくると、不思議で美しい木の実たちがたくさん!
ドラえもんのタケコプターみたいな形をしたものがあったり、まるで
人間みたいなどんぐりたちや、もちろんシダーローズも。

とにかく写真が鮮やかなので、かわいらしいものはよりかわいらしく、
妖しげなものはより妖しく、とてもダイレクトに感じることができます。
一口に木の実といっても、その形態や生態は実に様々。
自分の知識なんてほんの断片に過ぎず、木の実の奥深さを改めて
知ることができました。

眺めているだけでも楽しいし、勉強にもなる図鑑。
この秋は、木の実の世界にどっぷり浸ってみるのもいいですね。

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ジギタリス [本のこと]

子供の頃、私はものすごく寝つきが悪くて、布団に入ってもなかなか
眠ることができませんでした。

そんな眠れない夜、目を凝らすと暗闇の中に小さな小さな光の粒が
たくさん飛んでいるのが見えて、それは赤や青や黄色など、様々な
色をしていました。
しかも、その光の粒は止まっているわけではなく、右から左、左から
右へと、まるで流れ星のようにザーッと動いていくのです。

私は布団から起き上がり、その光の粒に触れてみたくて、つい手を
伸ばすのですが、残念ながら触ることはできませんでした。

大人になるにつれ、いつの間にかそんなことをしなくても眠れる様に
なりましたが、今でも目をつむった時に光の粒を見ることはできます。

そういえば、今までこの話を誰にもしたことがないんですよね。
どうやって説明すればいいのか分からなかったし、見える人はいない
だろうと思っていたので。

だから、大島弓子先生の「ジギタリス」を読んだ時には驚きました。

主人公の男子学生が、同じ学校の同級生に自分と同姓同名の男子が
いることを知り、相手の存在に振り回される様子を描く作品。
作中で彼の同級生の兄が、目をつむったら見える星雲の話をするのです。

眠れない時、無理に目をとじていると、どこからともなくわいて出て
消滅する不定形の発行体です

子供の頃ぼくはそれをよく観察しました
すると、ある一定の流れと形をもつものがあるとわかったんです

ぼくはその一番でかい一番明るい星雲を"ジギタリス"と命名したんです

まさに、私が子供の頃に見ていた光の星雲のことです…!
しかも「ジギタリス」という名前をつけたなんて。
植物のジギタリスには、確かに小さな点々がついているけれど、
星雲と全然結びつかない(苦笑)。
さすが大島弓子先生。

そういえば、以前朝日新聞のコラムで伊藤理佐さんもこの話に触れて
いました。
眠れない時に光の星雲が見える人って、結構いるのでしょうか。

話を「ジギタリス」に戻します。
作中で主人公は、同姓同名の同級生の存在について、もしや自分が
作り出した幻影なのでは?と思うことがあります。

同姓同名の同級生と光の星雲「ジギタリス」。
どちらも自分にしか見えないものなのでしょうか。

大島弓子先生の「ジギタリス」は「ロングロングケーキ」に収録。



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女ふたり、暮らしています。 [本のこと]

どんなに仲の良い女友達でも、一緒に暮らしてみたいと思ったことは
ありませんでした。

卒業旅行で友達と三週間共に過ごした時、ケンカもせずに意外と楽しく
過ごせたけれど、それはあくまでも旅行の話。
毎日一緒に生活をするとなると、ハードルがぐんと上がります。

しかし、この本に出てくる女性二人は、実に楽しそうな共同生活を
送っているのです。

元コピーライターのキム・ハナと元ファッション誌のエディターである
ファン・ソヌは、4匹の猫と共にソウルにある素敵なマンションで一緒に
暮らしています。
お互いに長い間一人暮らしを満喫してきたものの、それぞれに思うところが
あり、そんなときにキム・ハナが一緒に暮らすことを提案して、共同生活が
スタート。

一緒に暮らす前は、こんなにも気が合う人がいるのかとお互いに感じていた
のに、いざ暮らし始めると全く正反対の性格であることに気づき、時には
大げんかをすることも。
けれど、お互いに自分の悪い所を反省し、足りない所を補い合って、相手を
尊重しながら乗り越えていく姿は、見習うべき点が多い。
これって友達同士とか家族とか、関係ないんですよね。

そして、何より二人とも生活を楽しんでいるのが素敵だなと思いました。
もともとそのような性格だったのかもしれませんが、二人一緒になると、
ますますパワーアップするのかも。
やはり運命の相手なのではないでしょうか。

もはや友達ではなく家族のような自分たちの暮らし方を、キム・ハナは
W2C4という分子式に例えています。
W2は女二人、C4は猫が四匹という意味だそう(笑)。

彼女たちは独身主義というわけでもなく、この先もしかしたらお互いに
結婚することがあるかもしれないと言います。
先のことは分からないけれど、今はとにかくW2C4の生活を楽しんで、
この先もいろいろな化学反応をしながら、暮らしていくのでしょうね。

お互いに「一緒に住んでよかった」と言っているのがとても印象的。
結婚とか友達との同居とか形式を問わず、このような相手を見つけられる
ことが奇跡だと思うので、なんとも羨ましいです。

「女ふたり、暮らしています。」キム・ハナ、ファン・ソヌ著
二人それぞれの視点で記された、まるで往復書簡のような形式のエッセイです。


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エストニア紀行 [本のこと]

行ってみたい国はどこかと問われれば、以前はスウェーデンやフィンランド等の
北欧諸国でした。

けれども、ここ数年興味を惹かれるのはバルト三国。
国連によると、バルト三国も北欧に位置付けられているようです。

バルト三国は、エストニア、ラトビア、リトアニアの三国。
北はフィンランド、東にロシア、南にポーランドやベラルーシ等の東欧諸国が
位置しています。
ついバルト三国と一纏めにしてしまいますが、それぞれ歴史や文化に違いがあり、
知れば知るほど魅力のある国々。

そんな時に目にしたのが、こちらの本。

梨木香歩「エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―」。




「西の魔女が死んだ」等の著者である梨木さんが、エストニアを訪れた際の
体験を綴ったもの。

「それまで人工的な夜に入っていた機内は、再び調節され始めた照明で徐々に
明るくなり~」という冒頭の一文からして、これからどんな旅が始まるのだろう
と読者の興味をかきたててくれます。

首都の地下に張り巡らされた不思議な地下通路、古いホテルでの不思議な体験、
海辺の葦原、昔からの生活様式が保たれている島など。
ほっこりするような場面もあれば、時に背筋がゾッとするような場面もあり。

さらに、時々挟まれるエストニアの波乱万丈な歴史も、忘れてはいけません。
暗い歴史とそれに負けなかった人々。
その強さが、本書に登場する現地の方たちの佇まいに表れている様に思います。

そして、著者の旅の目的であったコウノトリとの出会い。
その夢は果たして叶うのか。

ただの旅行ではなく取材という形のため、現地の真の姿や人々の様子を知る
ことができるのは貴重です。
なにより梨木さんの人々や自然に向ける眼差しがとても優しくて、読んでいて
穏やかな気持ちになれる作品。

エストニア、ますます行ってみたくなりました。

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美しい本の世界<すみだ川> [本のこと]

今年も隅田川花火大会は開催されず、残念でした。

東京在住の私にとって、隅田川は馴染み深い川。
本や映像などで見かけると、つい気になってしまいます。

今回の美しい本は、永井荷風の「すみだ川」。
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冊子ほどの厚さで、大正四年に籾山書店から発行された版の復刻版です。
装幀は橋口五葉。
五葉様は漱石先生以外の作品でも、多くの装幀を手掛けました。

扉。
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私が一番お気に入りなのは、本文の上下にあしらわれたデザイン。

上はツバメ。
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下は魚。
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動物や植物を愛した五葉様らしいデザインは、読者の気持ちを和ませて
くれるので、大好きです。

奥付。
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この作品は装幀目当てで購入したので、実はまだ読んでいないのです。
こちらは冒頭の部分。

七月の黄昏も家々で焚く蚊遣りの烟と共にいつか夜になつて、盆栽を
幷(なら)べて簾をかけた窓外の往来に下駄の音、職人の鼻歌、人の話聲が
賑に聞え出す。

夏を感じさせる風情のある描写に、興味をそそられます。
この夏は花火大会の代わりに、「すみだ川」の世界に浸ってみようと思います。

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わたしの、本のある日々 [本のこと]

女優の小林聡美さんは、演技はもちろんのこと醸し出す雰囲気も素敵で、
文章にもそういう所が表れているなあと思います。

彼女のエッセイが好きで何冊か読んだことがあるのですが、今回読んだ
作品はこちら。

「わたしの、本のある日々」小林聡美著。


2016年から「サンデー毎日」で月に一度連載された文章をまとめたもの。
毎月2冊読んだ本についての書評を、自身の仕事や趣味、生活なども
からめて綴られているので、楽しく読めました。

聡美さんて、たくさん本を読んでいる読書家なイメージだったのですが、
ご本人曰く、年間を通して読む本の数も多くないし、本屋さんにもたまに
足を運ぶ程度で読書家ではないそう。
とても意外でした。

けれど、本は読むし好きだともおっしゃっています。
確かに本が好きでなければ、これだけの本について自分の感じたことを
書くなんてことは出来ないですよね。

この作品に登場する本は、勉強法や日本文化、食やエッセイ、漫画など
ジャンルも多岐に渡っています。
そんな中でも俳句や猫、植物に関する本が多いのは、彼女が特に興味を
持っていることだからでしょうか。

選ぶ本というのは、その時に自分が興味のあるものを反映しているなと
思いました。

なにより聡美さんの文章って、とても率直にご自身の言葉で書かれている
ので、読んでいて清々しくて気持ちいい。
そういう飾らないところも魅力です。

そして40代後半で大学への入学や、俳句やピアノにも挑戦など、つねに
向上心を持ち続けていらっしゃるところは尊敬しかありません。

ほっこりしたり、クスっと笑えたり、なるほどと感心したり。
本との出会いと共に、好奇心旺盛な女優 小林聡美さんの暮らしも垣間見る
ことができる一冊です。
巻末の酒井順子さんとの対談も興味深い内容。

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北欧インテリアのベーシック [本のこと]

先日、久しぶりに谷中の「ひるねこBOOKS」さんを訪問。

以前訪れた時と場所が変わっていたので、少々迷子になりましたが、
移転先はすぐ目と鼻の先でした。
以前の店舗もかわいらしかったけれど、現在はまるで雑貨屋さんの様な、
お洒落な雰囲気を感じます。

「ひるねこBOOKS」さんは、絵本や子供の本のほかに、猫の本、暮らしの本、
アートや北欧関連の本などを取り揃えていて、古書をメインに新刊も販売
されている書店。
作家さんのポストカードやレターセット等も置いてあり、かわいいものが
多くて、つい手が伸びてしまいます。

本を読むのは大好きなのですが、疲れている時は活字よりも写真や絵などを
眺めている方が気持ちが落ち着くので、今回はこちらの本を購入しました。

森百合子「日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック」
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サイン本ということで、森さんのサインも。
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恥ずかしながら、森さんのことを知らずに購入したのですが、せかほしにも
出演されたことがあるそう。
それなら、絶対見ているはず。
無意識でしたが、やはり好きなものは繋がっているのだな。

北欧というとお洒落なインテリアが思い浮かぶほど、最近はイメージが
定着しつつあり、私も憧れている一人。
テレビや雑誌などで目にしては、素敵だなとため息を漏らしています。

とはいえ、自分の家に北欧インテリアを取り入れるなんて、最初から無理
だと思っているので、考えてもみませんでした。

しかし森さん曰く、北欧の人達は「こうしなければいけない」というルールに
縛られることなく、ベースとなる部分の作り方次第で、自分らしく素敵な
空間を作っているのだそう。
そして、ベーシックな考え方をうまく捉えれば、日本でも素敵なインテリアを
叶えることができるとのこと。

いきなり全てを取り入れるのではなく、例えば色や灯りの使い方を知って
取り入れるだけでも、自分の部屋がぐんとお洒落で居心地のいい空間に
なりそう。

素敵なインテリアの写真を見ているだけで気分が上がるし、今まで考えても
みなかった、自部屋の北欧化について妄想も膨らみます。

森さんがご自宅をリノベーションした様子も紹介されていて、こちらは
本気モードの北欧化で、尊敬しかありません。
自分のやりたいことって、面倒くさがらずにマメに取り組まないと実現
しないのですね。

私は今のところ、妄想プラスほんの少しの北欧化を取り入れてみようかな。



「ひるねこBOOKS」さんについてはコチラ↓
https://www.hirunekobooks.com/

タグ:北欧
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断捨離下手 [本のこと]

本や雑誌はどんどん溜まる一方なので、時々断捨離します。

今年のゴールデンウイークも断捨離を決行し、古書店に買い取って
もらうものを選別したのでした。
未練がましくなるので、あまり考えずにどんどんやりました。

…と、そこまではよかったのですが。
もたもたしているうちに、あっという間に月日は流れ。
私の元から去っていくはずの本たちは、部屋の隅に積み上げられたまま。

中には名残惜しい本もあって、部屋がもっと広ければこのまま残して
おきたいのですけどね…。
なんてことを思いながら、つい本の山を漁ってしまったのです。

そう、本を処分する時に読み返すのは御法度!
なぜなら、絶対捨てられなくなってしまうから。

しかし、時すでに遅し。
これを見つけてしまいました。
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NHK大河ドラマ「新選組!」のストーリーブック前・後編。
いや~懐かしい!
2004年の放送とは、もうかなり昔ですね。
皆さん、若い!
っていうか、今となってはかなり豪華なメンバー。
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当時このドラマが大好きで、特にお気に入りだったのが堺雅人さんが演じた
新選組総長の山南敬助。
あの切腹シーンは悲しすぎて、山南ロスになりました。

香取慎吾くん扮する近藤勇の父親役は田中邦衛さん、母親役は野際陽子さん
だったのですね。
などと、しみじみしながら読んでいくうちに再びあの頃が蘇ってきて、
もう止まらなくなりました。

ええ、すっかり「読み返すと捨てられない」法則にはまりました(苦笑)。

そういうわけで、これは再び私の手元に残ることとなったのです。
はあ…つくづく断捨離下手な私。

タグ:SMAP
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 [本のこと]

松家仁之さんの「泡」を読みました。

「泡」という言葉について、いろいろな解釈をすることができて、
タイトルが絶妙な作品。

内容に少し触れると。
高校二年生になって間もなく、学校に行けなくなった男子校生の薫は、
大叔父のもとでひと夏を過ごすことになり、東京から離れた海辺の街に
やってくる。
大叔父が営んでいるジャズ喫茶で働いている岡田という青年に仕事を
教わりながら、店を手伝うことになった薫。
料理をすることに楽しさを見出したり、自分の周りにはいなかったような
大人たちと触れ合うことにより、少しずつ前を向いていく。

先述したようにタイトルになっている「泡」というのは、作品の中で
いろいろな意味を持っているように思います。

例えば、薫はとても繊細で思ったことを吐き出すことができないため、
空気の吸い過ぎで体の中にガスがたまる吞気症(どんきしょう)を
患っていて、お腹からガスを出す時に泡となって外に出ていきます。

それは物質的な泡なのですが、自分で自分をコントロールすることが
できない思春期特有な部分を泡として表現していたり、また思春期の
儚さも、すぐに消えてしまう泡に例えているようです。

出征してシベリアに抑留された辛い過去をもつ大叔父だって、人の命の
儚さを泡のように思っているかもしれないし。
どこからともなく流れ着いてきた岡田の姿も、泡のよう。

3人が感じた生きづらい世の中は、息をしづらい世の中とも言えるので、
それを泡として吐き出すことが大事。
小説の中のことに限らず、現実の私たちが、今まさに感じていること
なのかもしれないです。

松家仁之さんの作品は初めて読んだのですが、重そうなテーマなのに
重く書かれてないところが凄いなと思いました。

装幀にも触れておくと、「泡」という文字のところに控えめに泡が
ブクブクと描かれているのがほっこりします。
小説の雰囲気に合ってますね。



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