SSブログ

2つの波に込められた願い [美術]

先日放送されたテレビ東京「新美の巨人たち」は、葛飾北斎の「怒濤図」に
ついての謎を紐解くという内容。

「男浪」「女浪」と呼ばれる2枚の肉筆画「怒濤図」は、北斎様が最晩年に
手掛けた作品で、信州・小布施の神社の祭礼で使われていた上町祭屋台の
天井絵として描かれました。

この作品は小布施の北斎館に展示されていて、私も以前訪れたことがあり、
その時のことを少し振り返ってみようと思います。

私がまず訪れたのは、岩松院(がんしょういん)というお寺。
小布施駅からシャトルバスで20分ほどの所にあります。
hokusai_4.jpg

ここでのお目当ては、北斎様が手掛けた天井絵「大鳳凰図」。
この絵は21畳敷もあるそうで、とにかく大迫力っ!
「八方睨みの鳳凰」ともいわれ、その鋭い目はどこからみてもこちらを
見据えているそうです。
私もいろいろな角度から見てみましたが、確かにどこからみてもこちらを
見ているように感じましたよ。

160年以上経ってもなお色鮮やかなままで残されているのは、大変貴重です。
残念ながら本堂は撮影禁止なので、お寺で頂いたパンフレットに掲載されて
いる写真をどうぞ。
hokusai_2.jpg

お寺の境内ではこのような市も出ていて、心が和みます。
さすが長野県ということで、林檎が美味しそうでした。
hokusai_5.jpg

お次は小布施の中心エリアへ戻り、北斎館へ。
hokusai_6.jpg

北斎様は80代半ば、地元の豪農商 高井鴻山の庇護のもとに、岩松院や
東町・上町祭屋台の天井絵を書いたそうです。
北斎館ではその祭屋台の天井絵をはじめ、肉筆画や版本、錦絵などを
展示しています。
hokusai_7.jpg

私が訪れた時に開催されていた特別展は、「北斎漫画の世界」。
人間の表情の変化や動作、植物や動物、建物、自然。
北斎様の描写は本当に細かくて、素晴らしいとしか言えません!
この北斎様の世界観が遠くヨーロッパに伝わり、ジャポニスムのきっかけに
なったのですね。

そして、いよいよ「男浪」「女浪」の怒濤図!と思ったら。
なんと、この日はちょうど貸し出し中のため見れず…!
とても残念な思いをしました(涙)。
コロナが落ち着いたら、リベンジします!

ここで、話は「新美の巨人たち」に戻ります。
番組では、「男浪」「女浪」のふたつの波をつなげてみるとSの字になり、
これは陰陽説のもとになる対極図を表しているのではないかという新しい解釈
を展開しておりました。

こちらが「男浪」「女浪」(北斎館のパンフレットより。)
hokusai_3.jpg

絵の並びを変えてつなげると、確かにSの字に見えました!

ちなみに陰陽説とは、対立する陰と陽の気が調和し自然の秩序が保たれる
という思想。
祭りの天井絵なので、神に感謝をして健康や商売繫盛、五穀豊穣といった
住民の幸せを願うこのために何を描くのがいいか考えたのではないかと。

厳しい改革や大飢饉に見舞われた天保時代 先の見えない世界に平和が訪れる
ことを願ってこの絵を描いたのかもしれないということでした。

先の見えない世界というのは、今のコロナ禍においても同じですよね。
ということは、この北斎様が描いた2枚の「怒濤図」は、私たちにとっても
希望の光になってくれるかもしれません。

★岩松院の詳細はこちら↓
https://www.gansho-in.or.jp/

★北斎館の詳細はこちら↓
https://hokusai-kan.com/

タグ:葛飾北斎
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

百花繚乱 [美術]

山種美術館の開館55周年記念特別展。
「百花繚乱―華麗なる花の世界―」を見に行ってきました。

日本画専門の美術館である山種美術館には、以前から行ってみたかったので
ようやく念願叶いました。
このご時世で開館しているのも有難い。

恵比寿駅から少し歩いた落ち着いた場所にあるので、ぶらりお散歩がてら
訪れるのも楽しいです。
yamatane_1.jpg

今回の展覧会は、タイトル通り四季折々を彩るお花が主役。
以下は美術館のHPより、展覧会の見どころを抜粋しました。

1.華麗なる花の絵画が大集合!
横山大観、奥村土牛、速水御舟、加山又造ら、画壇を牽引した日本画家たちが
描いた花々の競演。

2. 個性豊かな花の表現にご注目!
作品や花への想いを語った画家自身の言葉などを交えながら、それぞれに趣向が
凝らされた、花の絵画の魅力を読み解く。

3. 百花の王・牡丹
「百花の王」とも呼ばれ、東洋絵画で伝統的に描かれてきた牡丹。
菱田春草や福田平八郎などが牡丹の花を表した作品を小特集としてご紹介。

日本画って独特の色使いや技法が好きなのですが、日本で古来から愛でられて
きた花々が一段と美しく感じるんですよね。

こちらは、唯一撮影OKな荒木十畝の「四季花鳥」。
yamatane_2.jpg

素敵…。
美しい色彩の花鳥画に、思わずウットリ。

他には、百種類の花が描かれた田能村直入の「百花」も素晴らしかったの
ですが、私が一番感動したのが福田平八郎の「牡丹」。
透き通る様な花弁が、今にも風に揺れてほわほわ~っと揺れているような、
とても繊細な画にすっかり惹き込まれました。
一見の価値アリです。

美しい世界に浸った後は、館内にある「Cafe 椿」へ。
温かいにゅう麺を頂きました。お団子付き。
yamatane_3.jpg

メニューにあった和菓子も美味しそうだったので、次回頂きたいです。
やっぱり私は花より団子?

「百花繚乱―華麗なる花の世界―」は6月27日(日)まで。
詳細は、山種美術館のホームページをご参照ください。
https://www.yamatane-museum.jp/index.html

タグ:山種美術館
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

三度目の正直 [美術]

今年のゴールデンウイークの唯一の楽しみといえば、国立博物館で開催される
「国宝 鳥獣戯画のすべて」を見に行くことだった。

鳥獣戯画の展覧会は、以前開催された時に混雑していて断念した経験があるので
今回こそはと気合を入れてチケットを入手したのだ。
初めて本物の鳥獣戯画の展示を見ることができる!と楽しみにしていた。
それなのに…。

緊急事態宣言により博物館が休館となり、チケットは払い戻しになってしまった。
本当に残念。

しかし最近になって、5月14日に展覧会が再開されるという嬉しいニュースが
舞い込み、再び心が躍った。
今度こそ見に行ける!
そう思った。

…のに。

結局休館は継続されることになったそう。
あー…残念。
仕方ないけど残念。

いろいろ思うところはあるけれど、展覧会を準備してきた博物館の方たちは
もっと無念だろうなあ。

再開されたら、今度こそ見に行くぞ。
三度目の正直を信じて。

それまで公式サイトで予習しておこう。
https://chojugiga2020.exhibit.jp/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

命がけ [美術]

葛飾北斎のあまりにも有名な版画「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」。

hokusai.jpg

ぱっと見、大きな波に視線が行きがちですが、よく見ると波の狭間に
船が三隻。
今にも大波にのまれそうになりながら、必死に船を漕いでる人々の
姿が見えます。
そして、遥か向こうには、自然に対峙している人々を見守っている
かのように、富士山が佇んでいる。

この絵を見ていると、なんだか勇気が湧いてくるので、デスクに
ポストカードを飾って仕事の合間に眺めています。

けれど、なぜ転覆しそうになりながらも、人々は必死に船を漕いで
いるのか。
今まで特にそのことについて考えが及びませんでしたが、本日の
朝日新聞の朝刊に興味深い記事が載っていました。

江戸っ子は、食べると75日寿命が延びるとされる初物に並々ならぬ
こだわりがあり、それが「勝つ男」に通じるカツオとなれば、10倍の
750日長生きできると信じられたそう。

この北斎様の絵に描かれている船は、押送船(おしおくりぶね)という
魚介を運ぶ快速艇。
命がけで江戸っ子の待つ日本橋の魚河岸に、初鰹を届けようとしている
のだとか。

あくまでも、その様な解釈もあるということだそうですが、江戸っ子の
初鰹に対する執念に驚きました。
そこまでして長生きしたいとは!

一つの絵にそのような物語がこめられているなんて、面白いです。
やはりこの絵からはパワーをもらえますね。

タグ:葛飾北斎
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

水道橋駿河台 [美術]

昨日5月5日は端午の節句でした。

家族に「昔の鯉のぼりは何色だったでしょう?」というクイズを
唐突に出されたので。

「黒でしょ?」と答えたところ。

一発で当たってしまい、つまらなそうな顔をされました(苦笑)。

だって、大好きな歌川広重の名所江戸百景の「水道橋駿河台」に
描かれているのです。
黒い鯉のぼりが、ドドーンと。

hiroshige_1.jpg

この大胆な構図ったら!
インパクトが強すぎて忘れようにも忘れられないですよね。

そもそも鯉は「鯉の滝登り」という有名な伝説があり、立身出世の
シンボルだったそう。
江戸時代には将軍に男の子が生まれると旗指物(家紋のついた旗)や
幟(のぼり)を立てて祝う風習があり、やがてこれが武家に広がり、
男の子が生まれた印として幟を立てるようになったのだとか。

これに対抗して町人の間では、立身出世のシンボルだった鯉を幟にする
という案が生まれ、鯉のぼりがあげられるようになったそうです。

この画でも、町人が考案した鯉のぼりを手前に描き、遠くに武家の幟を
描いて対比させているように見えます。

明治時代になると、真鯉と緋鯉の2色になり、昭和に入って青や緑などの
子鯉が登場したそうです。

最近では近所で鯉のぼりを見かけることが少なくなってきましたが、
鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいる姿を見るのは結構好きです。
そして、江戸時代のように黒い鯉だけよりも、カラフルな鯉の方が
見ていて楽しいですね。

ちなみに、この画はタイトルが「水道橋駿河台」ということで、
神田川、水道橋から南西方向にある駿河台の武家屋敷とその向こうに
富士山が描かれています。
昔はあの場所から富士山が見えていたなんて。
今度訪れた時には、富士山の姿を妄想してみようと思います。

タグ:歌川広重
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

没後70年 吉田博展 [美術]

東京都美術館で開催されている「没後70年 吉田博展」に行ってきました。

yoshida.jpg

お恥ずかしながら、本展覧会で初めて吉田博さんのことを知りました。
明治から昭和にかけて、風景画の第一人者として活躍された方なのですね。
故ダイアナ元英国皇太子妃も作品を飾っていたとか。

油彩、水彩だけでなく、後期には木版画でも才能を発揮。
本展覧会では、木版画を中心に展示されていました。

まず木版画というと浮世絵を思い浮かべたのですが、全然違いますね。
水面に映る光を表現した微妙な色使いといい、独特なほわわ~んとした
空気感といい、想像していた木版画とは全然違いました。

ほわわ~んとしたというのは、例えば朝もやの感じ。
まるで湿度までも感じるような表現でした。

同じ版木を用い、摺色を替えることで刻々と変化する大気や光を表わした
のだとか。
複雑な色彩表現のために重ねた摺数の平均は、なんと30数度に及ぶそう!

その結果、朝、午前、午後、夕方、夜など、細かい時間の変化までも表現
できたのですね。
木版画で、あれほどまでに繊細な色彩を表現できるとは思わなかったので、
いや、本当に驚きました。

また、国内外の旅先での風景を描いた作品も多く、なかなか旅に行くことも
ままらない今の状況にあっては、束の間の旅気分を味わうこともできました。
富士山や穂高などの山の作品も多数あり。

見ていて心が癒される。
ポストカードをたくさん買ってしまったのでした。
yoshida_2.jpg

東京都美術館での「没後70年 吉田博展」は3月28日(日)まで。
詳細は展覧会の公式サイトをご覧ください。↓
https://yoshida-exhn.jp/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

福田利之さん [美術]

福田利之さんの作品に初めて出会ったのは数年前のこと。

長野市を訪れた際に、雑貨店で見つけた2枚のポストカード。
その時は誰の作品かは知らずに、デザインを気に入って購入した。

それから数年経ったある日。
本屋さんで何気に手に取った本をパラパラめくってみると、そこには
見覚えのあるイラストが載っていた。

なんと、私が持っているポストカードと同じ!
本のタイトルは「福田利之 作品集」。
その時に初めて福田さんのお名前を知ったのだった。
もちろん本は即買いしました。

本というかイラスト集なのですが、中を読み進めていくとスピッツの
CDジャケットや小説のカバー絵など、多方面で活躍されている方だった。
早速スピッツファンの友人に聞いてみると、もちろん知ってました。

こちらが、そのポストカード。偶然の出会い。
fukuda_1.jpg

fukuda_2.jpg

そして、今年の7月。
「福田利之 作品集2」の出版記念として、南青山のTOBICHIで福田さんの
原画展が開催されていたので、行ってきた。

あいにく当日は雨風が強く悪天候だったのですが、自粛生活で久しぶりの
お出かけだったので、ずぶ濡れになりながらも行きました。

TOBICHIを訪れたのは初めてだったけど、かわいらしいギャラリー。
小さなスペースに福田さんの100点もの作品が展示されていて、たっぷり
福田ワールドを堪能させて頂いた。

撮影もOKでした。
fukuda_4.jpg

fukuda_3.jpg

福田さんの作品て、かわいらしいのにどこか不思議で、哀愁が漂っている。
そういうところが好き。
絵でも音楽でも小説でも、哀愁が漂っているものに惹かれてしまう。

併設されているショップで、ポストカードやTシャツ、ハンカチなどを購入。
どれもかわいくて、ついあれもこれも欲しくなった。
物欲がおさえきれない。危険な場所…!

「かわいいから、全部欲しいです」と店員さんに言うと、

「私もです!」と笑顔で返してくださった。とても実感こもってた(笑)

作品集も、もちろん購入。
時々眺めては、癒されている。

<福田利之 作品集>


<福田利之 作品集2>


※TOBICHIは南青山から神田に移転するそうです。
https://www.1101.com/tobichi/tokyo/index.html

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

13日の金曜日 [美術]

今日はなんと13日の金曜日なのだ。

art_1.jpg

この絵は、東京国立近代美術館で開催されたピータードイグ展を訪れた際に
鑑賞した「天の川」という作品。

一見すると、夜空に浮かぶ無数の星や湖に映る夜空のコントラスト、そして
色使いが美しく幻想的であり、どことなくミステリアス。
しかしよく見ると、湖の真ん中にカヌーが浮かんでいて、人が横たわっている。

この作品は、映画「13日の金曜日」のラストシーンから着想を得たものらしい。

それを聞いて、思い出した!
映画では、主人公がジェイソンとの戦いの末、やっと奴を倒したあと、静かな
湖の上でカヌーに乗っているシーンが出てくる。

ようやく平和を取り戻したんだねと、ホッとするや否や。
湖の中からジェイソンが飛び出てきて、主人公を引きずり込もうとするのだ。
子供の頃に見た時、驚いて心臓が止まりそうになったよ。

あの恐怖のシーンから、こんなに美しい作品が生まれるとは!

でも、そのことを知ったとたん、なんか不気味にも思えてきた。
このミステリアスな雰囲気には、そういう背景が含まれていたのだな。

久しぶりに映画「13日の金曜日」を鑑賞してみようか。
(たぶん無理。ホラー映画は苦手)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。