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52ヘルツのクジラたち [本のこと]

ようやく読むことができました。

図書館に予約を入れたのが一年ほど前。
2021年の本屋大賞受賞作品ということもあり、当時の予約はなんと数百人待ち。
半年後にようやく貸出可能になったのですが、その時期は忙しくて読むことができず、やむなく返却。
しかし、どうしても読みたくなり再度予約し、さらに半年ほど待ってやっと私のもとに来てくれました。

町田その子「52ヘルツのクジラたち」。


海辺の小さな街へ、逃れるように引っ越してきた主人公・貴瑚。
誰も知らない場所でひっそりと暮らそうと思っていたのに、寂しさが容赦なく襲ってくる。
そんな時、彼女の家に一人の少年が現れた。
伸びきった髪にボロボロの服装をした少年の体に、たくさんの痣を見つけた貴瑚。
辛い過去を持つ彼女は、そんな少年をどうにかして救いたいと思うようになる。

読んでいて感じたのは、丁寧な情景描写。
過去からなかなか逃れることができない貴瑚のその痛みが、じわじわと心に沁みてくる。少年が受けている傷もまた深い。そんな二人が最後に海辺で話す場面は、とても温かくて美しい。

頁をめくる度にどんどん引き込まれていき、気づけばどっぷり感情移入している自分がいて、借りたその日のうちに一気に読み上げました。

そうだ、こういう風に引き込まれる感覚になる小説がいいのだ。

タイトルになっている「52ヘルツのクジラ」は、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。その声は広大な海に響いているのに、誰にも届かない。

辛い過去を消すことはできないけれど、誰か一人にでもその声が届いたら。
その時はきっと前を向いて行けるのかもしれない。

大好きな福田利之さんによる表紙のイラストも素敵です。

町田その子さんの作品を読むのは初めてでしたが、他も読んでみたいと思いました。

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