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団地のふたり [本のこと]

私は団地が好きです。

戦後の高度成長期に日本人の夢がたくさんつまった建築物。
そんな団地に浪漫を感じずにはいられない。
団地内の公園から聞こえる子供たちの声や、どこからか漂う夕飯の匂い。
人々が生活を営んでいることが感じられて、温かい気持ちになるのです。

今回読んだ作品はそんな団地が舞台。

藤野千夜「団地のふたり」。



築60年の古い団地に住む幼馴染の奈津子とノエチ。
奈津子は同居している母親が親族の介護で郷里に帰っているので一人暮らし、ノエチは両親と同居している。
二人は保育園から中学まで同じ学校で過ごした後、別々の高校に進み、進学や就職を経てそれぞれ色々経験し、今はまた同じ団地の実家に戻ってきている。共に50歳。

団地には空き家が増え、高齢化が進んでいるという現在の団地が抱える問題も描写されているものの、特段大きな事件もなくて、日常が淡々と描かれています。
お互いに思ったことを言い合える二人なので、時にケンカをすることもあります。けれど、それもお互いのいい所も悪い所も知り尽くした仲だからこそ。仲直りのタイミングだって、ちゃんとわかるのです。

二人は家族じゃないけど、家族以上に分かり合えている様に感じて、その関係性がとても羨ましい。
そういう存在がいるって、きっとものすごく心強いように思います。

そんな二人とは友達でもなんでもないのに、なぜかすぐ近くにいそうな気がして。
読んでいると、心がほわっとします。

奈津子の家でノエチとご飯を食べる場面が多く登場するのですが、そこに出てくる食べ物も美味しそう。
日常って、小さないい事や悪いことの繰り返し。
そんな中でも、美味しいご飯を気心が知れた相手と食べれば、いつの間にか心もお腹も満たされるのだな。

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