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阿修羅のごとく [本のこと]

タイトルは知っていたものの、今まで読んだことがなかった作品。

向田邦子「阿修羅のごとく」。


70歳になる父に愛人がいることを知り、なんとか母に知られないように収めようと大騒ぎになる四姉妹。しかし、彼女たちもそれぞれに悩みを抱えている。
未亡人の長女は不倫、次女は夫の浮気を疑い、三女は独身で男っ気がなく、四女はボクサーと同棲中で不安定な生活を送っている。母のふじは典型的な良妻賢母で、常に夫や家族のことに気を配り、夫が浮気をしていることを知ってか知らずか、黙って日々の家事をこなしている。

読んでいると、まるで脚本のように描写が細かいなと思ったら、もともと台本だったものを小説化した作品だそう。だからか、ドラマを見ているような気になったのは。

そもそも、過去にドラマ化された作品としても有名で、キャストを見ると長女・綱子を加藤治子さん、次女・巻子を八千草薫さん、三女・滝子をいしだあゆみさん、四女・咲子が風吹ジュンさんという往年の名女優たちが演じていたのです。
なんて豪華な顔ぶれ!是非ともドラマ版を見てみたいと思いました。

向田邦子先生は母校の偉大なる先輩なので、在学中にお名前を耳にする機会があり、作品もいくつか読んだことがあります。ですが、当時は自分が子供すぎて、あまりピンとこなかったんですよね。
今回久しぶりに作品に触れてみて、衝撃を受けました。

女性の強さやエゴをここまで見せちゃう?って。同性としてグサッと刺さりました。
四姉妹が激しくぶつかり合う場面なんかは、もう男性は勝てないって思ってしまいますね。
だからといって、ドロドロした雰囲気ではないのがこれまた不思議。内容的にはドロドロになりそうなのに、そうならない描き方が向田先生のすごいところ。

姉妹はケンカしても、他の話題になるとケロッとしてたりする。やはり根底に家族の絆がしっかりと結ばれているからなのでしょう。そこは現実も同じで、変にドラマっぽく作られてないところもいいなと思いました。

時代背景は、まだ家父長制が残る昭和。それゆえの家族の在り方や男女の立ち位置も作品に反映されているため、今の時代とはまた違った感覚を抱くかもしれません。今だったら、もし父親が浮気していたとしても、こんな風に家族みんなで大騒ぎしないような気がします。
時代を比較しながら読むのも一つの楽しみ方。

最後に、次女・巻子の夫のつぶやきを。

「女は阿修羅だよ。」
「勝目はないよ。男は。」

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