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秋の雲 [夏目漱石]

ふと見上げると、空はもう秋の気配。
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つい、ほんとについ最近まで「暑い」が口癖になっていたというのに、今日は吹く風がひんやりと過ごしやすい。
季節の移ろいは気づかないうちに進んでいきますね。

秋というと、漱石先生がつくった俳句でいくつか印象的なものがあります。
先生は親友である正岡子規の影響で俳句をはじめ、たくさんの俳句を残されました。
俳句に詳しくない私でも、先生の心情に触れることができる気がします。

秋風の一人をふくや海の上
先生がイギリス留学に向かう際に弟子である寺田寅彦宛てに記した句。
一人で異国に旅立つ先生の寂しさを感じさせます。

筒袖や秋の柩にしたがはず
手向くべき線香もなくて暮の秋
霧黄なる市に動くや影法師
きりぎりすの昔を忍び帰るべし
招かざる薄に帰り来る人ぞ

留学先のイギリスで子規の訃報を聞き、高浜虚子宛ての手紙に記した5句。
遠い異国で親友の死を悼む先生。すぐに駆け付けることもできず、無念だっただろうと思います。

別るるや夢一筋の天の川
秋の江に打ち込む杭の響かな
秋風や唐紅の咽喉仏

静養のため修善寺に滞在していたものの、病状が悪化し一時は危篤状態に陥った先生。その後どうにか持ち直し、自身の日記に記したのが上記3句。
病床で詠んだ句ということは、見るものや耳にすることがいつもより違う感覚でとらえられるのでしょうか。

あ、なぜか物悲しい句が多かったですね。
最後に、私が一番好きな句はこちらです。

秋の雲ただむらむらと別れかな

日清戦争の従軍記者として大陸に渡った子規は、帰途の船中で喀血し神戸で療養しますが、その後松山に帰省し漱石先生の下宿先「愚陀仏庵」に2か月ほど滞在しました。この句は子規が東京に戻る時に詠んだ別れの句。
子規の滞在中に松山中の俳句をやる門下生が集まり、頻繁に句会が行われたことで、そこに参加した漱石先生も俳句に熱中するようになったそうです。

「むらむらと」っていう表現が漱石先生らしい。

漱石先生と子規については、いろいろ書きたいことがありますが、またの機会に。
先生は他にもたくさんの俳句を残しているので、興味のある方はこちらをどうぞ。



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