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夏休みに読みたい本<夏の庭> [本のこと]

人間はいつか死ぬ。
そう教えられたものの、死ぬってどういうことなんだろう。
子供の頃、そんなことを考えると不安で心細くなったものです。

きっと分からないからこそ、不安や恐怖を感じるのでしょう。
この作品の主人公たちも、人が死ぬとはどういうことなのかという疑問を抱き、ある行動を起こします。

湯本香樹実「夏の庭」。

小学6年生の少年たちは、仲間のうちの一人が祖母のお葬式に行ったという話を聞き、人が死ぬ瞬間を見てみたいという好奇心を抱く。
ちょうど町外れに住む生ける屍のような老人を見つけ、少年たちは老人がいつ死ぬのかを観察し始める。
ところが、観察されていることに気づいた老人は、少年たちに草むしりや用事を命じたりするうちに、どんどん元気になっていき人間らしい生活を取り戻していく。
一方で少年たちもまた、最初は文句を言っていたものの、老人と触れ合ううちに交流を深めていくようになる。

人が死ぬ瞬間を見てみたいなんて、さすがに思ったことはないので最初は驚きました。
けれど、少年たちの動機はあくまでも純粋。
確かに、近しい人の死を経験しない限り、死というものはどこか遠くて現実的ではないのかもしれません。

私自身もそう思っていました。同居する祖父母が亡くなるまでは。
祖父が亡くなった時に初めて人の死を間近に見て、人が死ぬってこういうことなのかと思いました。
その時に親戚が言っていた言葉が今でもずっと心に残っています。

おじいちゃんは、最後に「死」というものを教えてくれたのよ。
これは学校では教えてくれないことで、とても大切なことなの。

この作品でも少年たちは老人からたくさんのことを学びます。
それは学校では教えてくれないことです。
動機はなんであれ、ひと夏の貴重な経験をした少年たちは、大人になっても決して忘れないでしょう。

「死」という、ともすれば重くなってしまうテーマを描いているのにも関わらず、そう感じさせないのは、子供の純粋な目線で描かれているからでしょうか。
子供の頃に一緒に遊んだ友達や夏休みのこと、そして祖父母のことを思いだし、胸が熱くなりました。



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