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美しい本の世界<赤い蠟燭と人魚> [本のこと]

小説家であるとともに童話作家でもあった小川未明の代表作。

「赤い蝋燭と人魚」

子供の頃に読んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もその一人です。

物語のあらすじをざっとご紹介。
冷たい北の海に棲む身重の人魚は、人間はこの世で一番優しいものだと
聞き、生まれてくる子の幸せを願って人間に託すことにしました。
海辺にある小さな町の神社に置き去りにされた人魚の子供は、蝋燭屋の
夫婦に拾われて、大切に育てられます。
美しく優しい娘に成長した人魚は、夫婦の商いの力になりたいと蝋燭に
絵を描いたところ、それが評判となりお店はたいそう繁盛しました。
ところが、その評判を聞きつけた香具師が娘を売ってほしいと老夫婦に
頼みこみ、大金に目がくらんだ二人はとうとう娘を売ることに…。

これ以上はネタバレになるので控えますが、あんなに優しい娘を売って
しまうなんて、二人とも酷すぎる(汗)。
大人になって改めて読んでみると、結構残酷でシビアなお話だったことに
気づきました。

そういえば、序の部分で未明はこのように述べています。

自分自身の、最早や取り返すことの出来ない、輝かしい、そして
決して帰って来ない子供の自分の、自然及び人間に対するいろいろの
交渉を、再び眼の前に真実に書くことに於て、そこに藝術の世界を
造るよりほかに、童話のゆくべき道はない様に思はれる。

人間の狡さや死、栄枯盛衰など生きていく上で直面するテーマを
あえて児童文学に反映させる未明の作品は、子供にも大人にも
何かしら考えさせられるものがあるように思います。

「赤い蠟燭と人魚」を含む18のお話が収録されている本作品。
赤色が目を引く装幀も魅力的です。

表紙、背、背表紙。
mimei_1.jpg

カバーを外すとこんな感じ。金色が映えます。
mimei_2.jpg

漱石先生の「吾輩は猫である」と同様、天金になってます。
mimei_6.jpg

扉。
mimei_3.jpg

扉の次の頁に鮮やかなイラスト。
mimei_4.jpg

奥付。
mimei_5.jpg

装幀は誰が手がけたのか調べたのですが、わかりませんでした。
よく見ると、星が☆で描かれていたりしてかわいらしい。

収録されている他のお話も美しさやゾッとする怖さ、ユーモアなど
未明の世界観に触れることができ、子供はもちろん今を生きるあらゆる
世代の方におススメです。

タグ:装幀
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