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100分 de 萩尾望都 [本のこと]

お正月にEテレで放送された「100分de名著」のスペシャル番組
「100分de萩尾望都」が再放送された。

本放送は途中から見たので、再放送してくれて嬉しかった。
どうしても最初から見たかったのだ。

萩尾望都先生といえば、少女漫画の神様とも言われている方。
私も先生のお名前は子供の頃から知っていたが、当時の自分にとっては
内容が難しそうだという印象があり、初めて作品に触れたのはつい2年
ほど前のこと。

その時読んだのが、先生の代表作である「トーマの心臓」と「ポーの一族」。

読んでみて思ったのが、やはり子供の自分にとっては理解できなかった
だろうなということ。
なぜなら、少女漫画という枠を超え、もはや文学といえるものだったから。

今回のスペシャル番組では、司会のカズレーザーさんをはじめ、ゲストの
夢枕獏さん、ヤマザキマリさんなどそうそうたる方たちが、萩尾望都作品
について解説したり、分析したり、魅力を熱く語っていた。

取り上げられた作品は以下の通り。

・トーマの心臓
・イグアナの娘
・半神
・バルバラ異界
・ポーの一族

「トーマの心臓」は、ドイツのギムナジウム(全寮制の男子校)を舞台に
愛とは何かという宗教的なテーマを描いた作品。



冒頭でいきなり、少年トーマが陸橋から転落死するシーンから始まる。
トーマが愛する少年ユリスモールに残した遺書。
そこに、この作品の深いテーマが込められている。

ユーリ(ユリスモール)は過去に犯した罪に苦しめられていた。
トーマは彼の罪を自ら引き受け、自分が自死して天国に行けなくなる代わりに
ユーリを天国に行かせようとしたのだ。
この辺はキリスト教の、罪を犯した者は天国にいくことができないという
ことを意味しているのだそう。

つまり、トーマはキリスト教の教えでは大罪である自死を選ぶことによって、
愛するユーリを救おうとしたのだ。

「トーマの心臓」はアガペーという自己犠牲的な愛の物語なのだった。

もともとは、絵がキレイで、登場人物が美しい少年たちだから読んでみようと
思ったのだけど、内容が深い。深すぎる…!
これは、やはり子供の頃には理解できないな。

それから、少女漫画なのに、登場人物が14歳の少年でなければならない理由
について、ゲストの皆さんが語っていたこと。
それは、萩尾先生が自由を描きたかったからだという。
当時、女の子は女らしくしなければならないという教育を受けていたので、
知的なことより、女らしさを求められていた。
少年なら、そういうことに縛られず、作品の中で自由に動けるのだった。

あと、登場人物が14歳という年齢も大事。
13歳だと幼すぎて、15歳では少し色気がついてくるので、14歳なのだそう。

確かに、14歳という年齢はちょうどいい気がする。
しかし、こういう考えも、もともとは萩尾望都作品からのインプットによる
ものだと夢枕さんがおっしゃっていた。なるほど。

「ポーの一族」も14歳の少年が主人公。
永遠の命をもつバンパネラ(吸血鬼)である主人公エドガーが200年の時を
超えて生きる物語。



森に捨てられたエドガーと妹のメリーベルは、吸血鬼であるポーの一族に
助けられ、育てられる。
ある日、秘密の儀式を目撃してしまったエドガーは、死ぬか吸血鬼として
一族に加わるかという状況の中、結局14歳で吸血鬼にされてしまう。
吸血鬼は永遠に年をとらないかわりに、人の命を奪うことでしか生きられない。

最愛の妹メリーベルや仲間がいなくなってしまっても、ずっと悲しみを背負い
ながら生き続けなければならないエドガー。
そんな彼の悲しみが表れている言葉。

創るものもなく、生みだすものなく
うつるつぎの世代にたくす遺産もなく
長いときをなぜこうして生きているのか

周りの人間は年老いて死んでいくが、不老不死の吸血鬼であるエドガーは
永遠に時間の中で旅をし続けなければならない。
それは、あまりにも孤独で哀しい旅だ。

異端であること。
社会から異端だとみられているものに対しての萩尾先生のメッセージが、
この作品には込められている。

「ポーの一族」は、最後に書かれてから40年後の2016年に再開された
そうなので、そちらも読んでみたい。

美しさの中に憂いを感じる萩尾望都作品。
「イグアナの娘」「半神」「バルバラ異界」もゲストの皆さんによる
解説や深いテーマにとても興味を持ったので、ぜひ読んでみたいと思う。

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