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「トカトントン」を恐れずに [本のこと]

太宰治の作品に「トカトントン」という短編があります。

ある青年が、作家(おそらく太宰本人)に手紙で悩み事を相談するという
形でストーリーが展開されるのですが、悩みごとの内容というのが、
これまた奇妙で。

ものすごく簡単に説明すると、

仕事を頑張ろう!
恋をしてあの人がたまらなく好き!
健気に頑張ってる人を見て応援したい!

というように、何かに情熱をもったり感動したりしたとたん、
どこからか「トカトントン」という、金槌で釘を打つような音が
聞こえてきて、一瞬のうちに気持ちが醒めてしまうというもの。

実はこれ、私も時々聞こえてくるんです。

いや、実際に音は聞こえないのですけど。
何かに夢中になったり熱くなったりすると、急に何かの力が働いたかの
ように、サーっと醒めてしまうことがあるのです。

きっと、「トカトントン」が鳴っているのではないか。
そう思うのです。

しかしこの音、厄介ですよね。
だって情熱をもって進もうとしてるのに、そこで醒めてしまうとストップ
してしまうから。
もし、あのまま突き進んでいたら、もっと大恋愛してたかもしれないし、
出世してたかもしれないし(!?)

そんな風に、ずっと「トカトントン」のせいにしてきた私。
最近久しぶりに太宰の「トカトントン」を読み返して、ハッとしました。

青年が作家に相談の手紙を送ると、最後に作家が返事を出します。
少しだけ引用すると、

十指の指差すところ、十目の見るところの、いかなる弁明も成立しない
醜態を、きみはまだ避けているようですね。
真の思想は、叡智よりも勇気を必要とするものです。

以前はあまり意味がわからず、そのまま流していたのですが、
これって要するに、あれこれ考えずに勇気を持ってやってみろ!
ってことなのではないでしょうか。

そうか。
これからは「トカトントン」を恐れずに、勇気を持って突き進んでみます。


太宰治の「トカトントン」は、「ヴィヨンの妻」に収録されています。


タグ:太宰治
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